
こんにちは、インキュベクス株式会社、顧問の上村(かみむら)です。
本日は「要介護度の見直し」について、実際の事例を交えながらお話しします。
介護現場で働いている方の中には、「この方、本当はもっと要介護度が高いのでは?」と感じたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
私たちがサポートしている方の中で、まさにそんなケースがありました。
その「気づき」から始まり、最終的には“週7日の安心”支援が実現した事例です。
こちらの動画はYouTubeでも配信しておりますので是非ご覧ください。
支援の始まりは違和感から
今回ご紹介するのは、独居で暮らすAさん。脳梗塞を患い、左半身に麻痺が残っている方です。
初回アセスメントの段階では「要支援1」との認定を受けていましたが、私たちのケアマネージャーはすぐに違和感を覚えました。
Aさんは歩行器がないと移動が難しく、入浴・排泄にも見守りが必要な状態。
転倒のリスクも高く、明らかに生活に大きな制限があるにもかかわらず、要支援1では受けられる支援の範囲が限られてしまいます。
主治医との連携と区分変更申請
このままでは必要な支援が届かない――。
そこで担当ケアマネージャーは、速やかに区分変更の申請を決めました。
区分変更とは、要介護度を現実の状態に合わせて再評価してもらう手続きのことです。
そのためには、主治医と連携して「主治医意見書」を改めて提出してもらう必要があります。
Aさんの状態を共有したところ、主治医も「それなら必要かもしれないね」と理解を示し、意見書を新たに作成してくださいました。
その結果、Aさんの要介護度は「要支援1」から「要介護2」へと大きく見直されました。
月5万円→月20万円、サービス内容の劇的拡大
この変更により、支給限度額も月5万円程度から20万円程度まで増額。(※)
それに伴い、利用できるサービスの範囲も飛躍的に広がりました。
具体的には以下のような支援が可能になりました:
- 入浴、更衣や排泄介助など
- 訪問介護(平日毎朝30分)
- 週末のデイサービス
- 見守り支援体制の構築
毎朝の訪問介護が生活のリズムを整え、ご本人の表情も明るくなり、生活の質が一気に改善したとの報告が上がっています。
(※)横浜市ウェブサイト参照(https://www.city.yokohama.lg.jp/faq/kukyoku/kenko/kaigo-hoken/20211015141219163.html?utm_source=chatgpt.com)
「週末」はどうする?“できる力”を活かした支援設計
平日は支援の体制が整いましたが、課題は週末でした。
特に日曜日は、通常のサービス提供が少なくなります。
私たちはこの点についても議論を重ねました。そしてたどり着いたのが「全部支援ではなく、“できる力”を信じる支援」です。
Aさんは、歩行器と手すりさえあれば、トイレに行く力が残っていました。
そこで、土曜日はデイサービスを活用し、安心して入浴できるように調整。
日曜日は、近隣の方々の見守り支援をお願いし、私たちとの緊急連携体制も構築。
「1人じゃない」と感じられる支援の形をつくることができました。
“尊厳を守る”という支援の本質
私たちのケアマネージャーが語っていた言葉が印象的です。
「できることを信じる、それがその人の尊厳を守ることなんです。」
その方が自分でできることを尊重し、見守りながら必要な支援を差し出す。
これこそが介護支援の本質であり、ケアマネージャーとしての使命だと感じています。
夜間はポータブルトイレを設置するなど、転倒リスクを極力減らしながらも、Aさんの自立をサポートしています。
将来の選択肢まで見据えた支援設計
現在、Aさんの在宅生活は支援体制の拡充によって非常に安定しています。
しかしながら、脳梗塞発症による活動量の低下や年齢的変化などを見越して、私たちは次のステップ=施設入居も視野に入れた話し合いを行いました。
今の段階で、ご本人とも基本的な合意が取れています。
在宅生活を支えながら、未来の安心も同時に準備していく。それもケアマネジメントの重要な役割だと認識しています。
気づきが変えた、人生の質
今回の事例から言えるのは、たった一人のケアマネージャーの“気づき”が、Aさんの人生に大きな変化をもたらしたということです。
- サービス日数は週1日から週6日+近隣の支援へ。
- サービスの幅はおよそ4倍に拡大。
- 「支援される人」から「支援の中で生きる人」へ。
私たちは、制度を繋ぎ、人生を支え、尊厳を守る存在でありたいと考えています。
そして、こうした仕事を共に担ってくださる仲間も募集しています。
気になった方はお気軽にお問合せ・ご連絡ください。
お待ちしています。