元インキュベクス代表取締役(現:円仁会代表)の上村(かみむら)さんにお話しいただいております。

こんにちは、円仁会の上村です。
今日は、「看護師さんにどうしたら気持ちよく動いてもらえるか」というテーマでお話ししたいと思います。

医療や介護の現場で働く方々のマネジメントにおいて、特に私のように民間出身の経営者にとっては、現場の専門性や職種ごとの価値観を理解するのが難しい場面も多いですよね。

「指示したのに動いてくれない」
「なぜか気持ちよく協力してくれない」

こんなお悩みを、他の経営者の方々からもよく耳にします。
私自身もまったく同じところからスタートしました。

本日は、そんな中で私が実践してきた、“医療職の方々と心地よく協働する関係性の築き方”について、具体的にご紹介させていただきます。

こちらの動画はYouTubeでも配信しておりますので是非ご覧ください。

1.人を動かす前に「人を知る」

マネジメントは“人を動かす”ことだとよく言われますが、私はそれ以前に「人を知る」ことが最も大事だと考えています。

私も若い頃は、「仕事なんだからやって当然」と思っていました。
しかし、50代に入った頃、その考えに疑問を持つようになりました。

「この人は今、どんな環境で働いているのか」
「家庭ではどんな役割を担っているのか」
「どんな未来を描いているのか」

こうした背景を知ろうとする姿勢が、相手の信頼を得る第一歩だと思うようになったのです。

例えば、「親の介護が近いうちに始まりそう」という看護師さんがいたとします。
その事実を知っていれば、配慮のある声かけや業務の調整もできますし、何より「理解されている」という安心感が相手の中に芽生えます。

マネジメントの前に、人間関係の土台をつくる。
まずこれが、私が最初に大切にしていることです。

2. 事業と個人の“接点”を見つける

次に私が重視しているのは、会社の事業計画や方向性と、その人個人のキャリアビジョンの交差点を見つけることです。

経営者として、売上や成長戦略を考えるのは当然ですが、それだけではスタッフは動きません。

「この取り組みに関わることで、あなたのキャリアがこんな風に広がると思う」
「この仕事は、あなたが目指している専門性と一致していると思う」

そういった対話を、心から伝えることで、はじめて相手の心が動きます。

ここで重要なのは、表面的な言葉ではなく、相手の想いを受け止めた上で**「あなたの未来のためにもなる」と本気で思っていることを、伝えること**です。

その対話のプロセスを通して、「業務」ではなく「自分のビジョン」として捉えてもらうことが可能になると、私は感じています。

3. その人にとっての“価値”を探す

もうひとつ私が大切にしているのは、依頼する業務や役割が、その人にとっての“ベスト”になり得るポイントを見つけることです。

たとえば、その仕事に挑戦することで報酬が上がる、キャリアアップに繋がる、家庭環境がより良くなる──
そうした「この人にとっての意味」を見つけ出すことが大事なのです。

もちろん、すぐにはそういった価値が見つからないこともあります。
しかし、日々の対話や観察から、少しずつヒントを得ることができます。

関係性が築けていると、多少の無理や背伸びがあっても、
「よし、やってみよう」と前向きにチャレンジしてくれるようになるものです。

訪問看護ステーションの運営を始めて9年、そのことを何度も実感しました。

経営者やマネジメントする側が「変化の起点」になる

現場で看護師さんやPTさんが思うように動いてくれないとき、
それは「やる気がない」のではなく、まだ信頼関係や共通の未来像が描けていないだけなのかもしれません。

私たち経営者が率先して関係性を築き、相手の人生や夢と向き合うこと。
そして、未来への責任を果たす覚悟を見せること。

それこそが、組織を動かす力になります。

医療者が患者さんとの対話を大切にするように、
私たち経営者は、働くスタッフとの対話と未来への約束を、誠実に積み重ねていくべきではないでしょうか。

変化のきっかけは、いつだって「人と人との関係性」から生まれることが多いですよね。
ですから私はこれからも現場と向き合っていきたいと思っています。

円仁会とは?
円仁会は、インキュベクスやケイスラッシュ、医療関係施設など、複数の関連会社を統括するホールディングカンパニーです。今年 1月より私は円仁会の代表取締役に就任し、よりスムーズな運営を目指して、各関連事業所の代表職を信頼できる方々に委ねております。