お世話になります。インキュベクス青井です。

超高齢時代となった現在、患者が通院せずに歯科医師の診療・治療を受けられる「訪問歯科」のニーズが高まっています。

この動きに対応するように歯科医の方がご自身で介護施設経営に取り組まれるケースも増えております。

先日も訪問診療を積極的に進める歯科医の方が今後の自らの訪問先の確保として私たちのコンパクトな老人ホーム「介護の王国」を始められることが決定しました。

本日は、なぜ歯科医の方が積極的に老人ホーム経営に乗り出されるのか、その背景を数年前から老人ホーム経営を運営されているA先生(歯科医)に歯科業界の事情を含めてお聞きしました。

歯科医の将来は決して楽観視できない状況


A先生、本日は、よろしくお願いします。

なぜ最近、歯科医の方が老人ホーム経営に参入されるケースが増えてきたのでしょうか



そうですね。まず、歯科医の場合、収入の枝(資産を増やす方法)は、極めて少ない状況です。

自分の資格を活かして歯科医院をやる、イコール自分が院長を務めるクリニックを大きくするか、分院をいくつか作るくらいしかないです。



なるほど…



しかも分院を作る、増やすのも昔ほど簡単な時代でなく、歯科医の数も多いため、熾烈な患者の奪い合いもあり、分院を出せば成功するとはいえません。

むしろ出したことによって足元をすくわれる(経営に失敗する)ケースも多いのも事実です。


なるほど、歯科医も昔のように安泰ではない時代なんですね。

歯科医と訪問診療と往診先としての老人ホーム


歯科医院の増収・安定性を考えると、外来診療のほかに訪問診療を持っていることがベストです。

しかし、歯科医が訪問診療をやるにはいろいろな障壁があります。



それは往診の方法的なものですか?



いいえ、ノウハウ(往診のやり方)の問題というよりは「利権」がないと往診は難しいです。

往診のやり方自体は、最初は知らなくても誰かにレクチャーしてもらえればできます。むしろ、往診へ行く先が無い、患者を紹介してもらえるコネがないというのが一番の障壁です。



先ほど「利権」とおっしゃいましたが、なかなか新規で訪問診療を取るということは難しいですか



ええ入り込めないです。利権の問題です。



なるほど、それであればご自身で訪問先を作ってしまうという発想ですね。



そうです。自分で往診先=老人ホームを作ってしまえば、確実にコントロールできます。

自分の施設だったら何がいいかと言えば、文句を言われないです。「今日来なかったじゃないか」とか。定期的にサービスを提供すると約束した以上は、やはり行かなければならない。

通常は、“相手の要望に合わせて”行かなければならない。そこの調整を自分の施設であれば“自分の都合で”できる、自分で持っていると、両方に対して上手くできます。



なるほど。有難うございます。

歯科医としてのライフプランニング


歯科分院を出すのであれば老人ホームを出されたほうがいいってことですね。

ちなみに歯科医の方が開業したあと、分院を出す、考え始める時期というのは、どのあたりですか?



開院してから大体約3年後くらいです。3年経つと事業が軌道に乗ってきますから。



なるほど開業から3年後くらいなんですね。



歯科医として、まず勤務医としての3年から5年の修行期間があります。3年だと短い気もしますが…キャリアの積み方は人によって違いますしね。その後に開業を考えます。

勤務医の頃は、普通に給料を貰っていますが、個人で開業して3年経つと、とりあえず3期分の確定申告が出せます。ちょうどこのあたりが法人化しようかというタイミングですね。

銀行さんからも「先生、分院どうですか」「融資しますよ」と営業をかけられ話を持ってこられます。事業が上手くいっていたらお金を貸しますよって言ってくる。

特に事業がうまくいっていて、なおかつ若い先生だと、分院を出す傾向があると思います。歯科医として事業自体が面白い、治療が面白い時期だから力がある方ならなおさらです。

でも開業して10年経つと事業が、昔のように売上が伸びないことに気づきます。そして「どうしようかな、これから」ということになるんです。



そうなんですね…



A先生:実際、廃業していく先生も多いです。50歳以上になったとき、本来ならもう一回クリニックに設備投資してリニューアルしないといけないですが、そこから何千万円と入れたくない、ゆるやかに滅ぶのがいいという人も多い。





歯科医は、かつては、開業すると儲かっていたし、開業せざる得なかった。今は…。
もちろん勤務医のままでいい生活ができるかというとそうでもありません。

ただ、今は開業自体のリスクがどんどん高くなっていますので二の足を踏んでいる人が沢山いらっしゃいます。



歯科医としてライフプランを見直す必要があるということですね。



そうですね。…一番悲惨なのは、歯科医院で5000万円融資を受けておいて突然、歯科医本人が死んでしまい、家族が連帯保証人になっていて借金のために自己破産するパターンです。

これは、実際にあります。それが我々医療人としては、最低の死に方です。

結局、価値は「その人のライセンス(歯科医免許)」だから、その人が死んだらおしまい。医師免許は一回きりの利権でしかないんです。



とても厳しいお話ですね。



実は医者でも歯科医でも資産を持っていない人は結構います。医療法人は、相続の時に結構(相続税)で持っていかれるらしいです。

また実際キャッシュは、無いのだけれど、毎月の法人で出た利益が累積していくので、資産として帳簿上乗っかっていると、医療法人の相続時に帳簿上で見て持っていかれます。

それで資産を失ってしなうケースが結構あります。ただ医療しか勉強してこなかった我々には細かい税のことはわからない…

歯科医としてもやらなければならないことが山積みなので、自身の資産形成やライフプランニングを後回しにしてしまう歯科医の方は多いのは事実です。

治療に情熱を注いでいる方は特にその傾向が強いように思います。

しかも将来に不安を抱えた歯科医は、必ず開業します。開業せざる得ない。それしか手段がない。しかし、それも博打。切羽詰まっても「やるしかない」一揆みたいなものです(笑)。

そういった意味においても歯科医が別の選択肢を持つ、老人ホーム経営に乗り出すというのは、歯科医本人のそしてご家族の資産形成としてもとても利にかなった方法といえます。



資産形成が将来の安定のカギになるということですね。

不動産と歯科の連携による新市場の創出


そうです。歯科医の資産形成の在り方として、老人ホームは不動産だから、事業単体としても収益を上げることができます。

同時に歯科医の訪問診療先としても収益を上げられるという、相乗効果を上げられる意味でも非常に有望です。

また現在、少子化により空室リスクの大きい普通の賃貸物件への融資が厳しくなっているので、アパート・マンションの代わりに老人ホームを建てること自体もとても有用です。



なるほど不動産投資としての視点ですね。



そうです。不動産を持つことは歯科医の資産形成としてもとてもよいと思います。

これから歯科分院を出すリスクと老人ホームを出すリスクを考えると、今のご時世、たとえ未知の業界だとしても、老人ホームのほうがリスクが少ないと思います。

老人ホームは、売却できますが、歯科医院は、売却するにしても買い手がつかない。

そういった意味でも、歯科医として自分で老人ホームを作って訪問診療をやるのは、王道中の王道だと思います。

分院を作りますか?老人ホームを作りますか?


なるほど、実際にA先生の周りの歯科医の方で老人ホームをやっている方も多いのですか?



いいえ、ほとんどいないです。我々歯科医は、医者と違って老人ホームを持っている人は非常に少ないです。



その発想に行きつかないとか?



いいえ、何故かというと老人ホームをやるノウハウ自体が無いからです。

老人ホームに入居者を入れるとなったとき、たとえば病院を経営している医療法人ですと、自分の患者の出先として老人ホームに入れることもできます。

また場合によっては、訪問看護ステーションを作って自分のところの看護師を派遣すればいいという考えになります。

看護師は、病院ならいくらでもいますので、その中から3人連れてくればいいので簡単です。

しかし歯科医には、それができません。



そういったご事情もあり、私たちの「介護の王国」の老人ホームを選ばれる歯科医の方が増えてきたのですね。



「介護の王国」であれば120坪くらいの小さな土地でも始められますし、なにより老人ホーム運営が初めての方をバックアップするスキームがある。

これは、歯科医にとってとても有難いです。



ありがとうございます。

19床の「介護の王国」は、非常に値ごろ感がある

たとえば、100床クラスの老人ホームを作ろうとなると、とんでもない金額になってしまいますが、「介護の王国」の老人ホームは、19床が標準型なのですごくいいと思います。非常に値ごろ感がある。

歯科医は、老人ホームを建てるとしたら、土地を買って建物を建てる、それに何億円とかかる、というイメージを持っています。

またそもその建て貸しの仕組み自体、知らない歯科医はとても多い。

テナントで入るケースだと単純にテナントを借りて入るんだなとわかりますが、いわゆる地主がいて、ゼネコンがいて、それを一括借り上げして、そしたら建てなくてもいいんだとわかない。

入居のときも、6か月フリーレントをつけてくださいよって言っても「フリーレント」という言葉も知らない。

歯医者はずっと歯のことしかやっていないので、歯のこと以外は、何も知らない。それ以外の知識は、ほぼゼロと思っていただいてもいい人種です(笑)。



いえいえ、それはさすがに(笑)。



そういった意味でも私たちが苦手とする部分、不動産の知識から入居率とか稼働率、スタッフの採用ノウハウまで、老人ホームの立ち上げから運営に必要なことがすべて揃っている「介護の王国」は、歯科医にとっては素晴らしい仕組みですね。



ありがとうございます。

ちなみに、歯科医の方は、ご実家も歯医者をやっている方も多いと思います。開業される時には、親から援助がもらえるケースもありますか?



家庭環境にもよりますが、そういう人が多いのも事実です。

一番お金がある資産家だと「早く帰ってこい、ここに土地もクリニックも準備しているから」というケースもあります。地元に親が医院を建てて準備して、後は本人が帰ってくるだけのパターン。



なるほど、ではそのタイミングで「介護の王国」の老人ホームを(親が)建ててしまうのもありですか?



本当に資産家の方なら、両方建てさせればいいと思います。

クリニックと横に「介護の王国」。実際に「老人ホーム」と「歯科医院」をセットで建てるパターンもあります。

「介護の王国」の19床のモデルだと広い敷地だと土地が余ってしまうので、余った土地に医院を作らせる。



なるほど。150坪くらいなら19床の「介護の王国」でちょうどいいですが、仮に300坪くらいあればセットで十分建てられますね。



但し、同一敷地内は、今のところ歯科については、減算はないので問題は、ないですが、老人ホームと歯科医院が同一法人ではよくないので、代表者を変えるなどの方策は必要となります。

同一法人ですと、訪問診療とみなされなくなりますので。



なるほど「老人ホーム」と「歯科医院」をセットで建てるというのもありですね。

これからの時代のニーズに応える歯科医の老人ホーム経営


これからの時代、間違いなく高齢者、患者は増えるので、市場は、増え続けます。

また高齢者の死因の多くが肺炎になってきていて、しかもそのうち7割くらいが誤嚥性肺炎だとすると口腔ケアをしっかりするのは当たり前の時代です。

ですので、自分が経営する老人ホームの特徴を口腔ケアにするのは、ありだと思います。私のところでも口腔ケアを施設の売りにしています。

僕は、極論、口腔ケアをやらないのは虐待だと思っています。口腔ケアをやらなければ事故が起こるとわかっているのにやらないのは、問題だと思う。

ちゃんと口腔ケアをやれば、誤嚥性肺炎による事故は防げます。事例としても3年、5年と誤嚥性肺炎が出ないケースが出てきています。それはすごくいいことです。



まさにこれからの高齢化社会のニーズですね。そういった意味でも歯科医の方が老人ホーム経営をされるというのは、とても意味のある取り組みですね。

本日は、貴重なお話をどうも有難うございました。